クリスとの会話から

以前プラトンの『国家』を読んでいた時のこと、同屋のクリス(19歳・薬学専攻)が「専門(中国史)の本読んでるの?」と聞いてきたので、「プラトンの『国家』を読んでる。歴史学をやってる人間は哲学書も読む必要があると思うんだ」と答えると、「そうだね」と返ってきた。


他愛もない会話である。しかしながら、日本で同様の回答をした際には、「でも専門は中国史でしょ?」とか「物好きだね」などと(ここまで露骨な言い回しではなくても)言われたことの方が多かった。


歴史学とは「人間の歴史」を対象とし、「(研究者自身を含めた)人間の営みを知る学問」であると思う(もちろん他の要素もある)。一方、哲学とは「人間とは何かを問う学問」と言え、両学問の対象には重なる点が多い。今ある専門の分化(領域)は便宜的なものであり、歴史学を学ぶ以上、哲学に限らず文学・農学・数学などおよそ人の営みに関するものに対して興味を持つ必要があろう(この中に現代社会への関心が含まれることは言うまでもない)。そう思えばこそ、自分は歴史学に大きな可能性を感じるのである。


いまの自分は研究室の先輩・後輩に恵まれたおかげで、思想など歴史学以外の分野に関しても興味を持てるようになっている。果たして19歳の自分はクリスと同様の返答をできたであろうか?