上海旅行記③(2007年12月23日)

昨日の雨も上がり、今日は昨日行けなかった豫園に行くことに。


最寄の駅から30分ほど歩き、豫園商城に足を踏み入れた瞬間、黒山の人だかり。昨晩小吃だけで済まし、朝ごはんも食べていない2人に、この人だかりを駆逐する元気もなく、まずは、お腹を満たすため南翔饅頭店に向かう。ここは小籠包がとても有名な店らしく、ある程度の混雑は予想していたが、到着した我々がそこで目にしたものは、この世のものとは思えない長蛇の列。取りあえず、列の最後尾に並んだものの、すぐ後ろに並んだ中国人が「以前は2時間並んだ」と宣っているのが耳に入るし、普段の行いが良かったせいか、団体で来ていた小皇帝の皆様が1人1人小籠包を購入していらっしゃるのが目に入る(一緒にいた引率の先生は何をしていたのだろう?)。並ぶことが嫌い&空腹で機嫌の悪い2人は、仕方がないので、小声の日本語で小皇帝に悪態をつきながら待つこと1時間半、ようやく小籠包をゲット。ここの小籠包は、皮が薄く餡が多いのが特徴だが、1つ1つのサイズが大きくないため、女性でも食べやすくなっている(byIさん)。しかしここで、痛恨のミス。長時間並び、そしてあまりにも空腹だったため、平常心を失った自分はIさんの制止を振り払い、小籠包を3人分頼んだのだが、これは多すぎた。それにしても、人は何度同じ失敗を繰り返すのだろう。


お腹が満たされ、余裕という文字を思い出した2人は、なぜか裏口から豫園に入場、猫がお出迎えをしてくれる。入ってすぐの書庫に心を惹かれつつも(これがあれば、我が家の蔵書問題も一挙に解決)、次に現れた書斎にまた目を奪われた。以前尾道で、林芙美子の書斎を見たことがあるのだが、この書斎も、書き物をしている時、ふと机から目を上げると、すばらしい景色が目に入ってくるように設計されているという点で共通している。このような書斎があれば、自分の論文執筆もはかどると思うのだが、如何?この庭園のすばらしさを伝えられるほどの文章力を持ち合わせていないのが残念だが、この庭園を見るだけで(一時に建設されたものではなくても)、当時の官僚が有していた権勢の一端を垣間見た気がする。このような庭園を造らせることができる力を持つ官僚、そして建設後も、外から官僚の象徴であるこの庭園を眺めることによって、威圧された百姓がいたという構図が当時は展開されていたのであろう。この豫園は豫園商城のように人が多くなく、敷地も広大なので、ゆっくり時間をかけて様々な物を見ることができたので、大満足。


豫園を出た後、Iさんの希望で庭園横の湖心亭で、体を休めつつ、次の作戦会議を開く。ここの2階は喫茶室になっており、庭園の中や豫園商城を見下ろしながら、お茶を楽しむことができる。小1時間ほどゆっくりした後、一昨日雨でゆっくり見ることのできなかった外灘に向かう。到着したときにはすっかり日も暮れ、一面がライトアップされていた。明らかに観光客と思しき人々が盛んに写真を撮っている横で、自分も負けじとおのぼりさん全開でシャッターをきり始める。それにしても、外灘をはじめ居留地だった場所で、似たような雰囲気を感じるのは何故なのだろうか?特に、自分の訪れたことのある地に限定すれば、必ずと言って良いほどに、時計台のついた建物がその中心部にあった。今はおのぼりさんが気軽に写真を撮っているが、居留地だった頃これらの荘厳な建築物(外国人の象徴である)は、豫園と同じく、外から見る者を圧倒していたのであろう。


外灘を一通り歩いた後、今晩の食事上海料理を食べに、以前予約した保羅酒楼へ。予約したとき受けたオジサンの感じがあまりにも軽かったので、予約ができているか危ぶまれたが、笑顔(少なくとも、自分にはそう見えた)の服務員が予約されていたことを告げ、一安心。ここのメニューは事前にIさんが綿密なリサーチを行っていたため、ビール・棒棒鶏・水晶海老?・蟹味噌と豆腐の炒め物?などを手早く注文、そして米フリークの自分は炒飯を追加した。以前、友人から上海料理は甘ったるいと聞かされていたが、ここの料理はさにあらず。特に、水晶海老?はその見た目に違わず、繊細な味付けがなされており、思わず2人で舌鼓をうつ。さらに、蟹味噌と豆腐の炒め物?は蟹味噌の甘みを活かした味付けで(こんな甘さなら大歓迎)、豆腐の舌触りが絶品。2人が幸せの絶頂に到達した頃、少し遅れて炒飯がやってきた。これでしめれば幸せと、炒飯に向かうや否や、己の眼を疑う出来事が。炒飯にミックスベジタブルのような物が入っているではないか。そう、あの美味しくない喫茶店などのメニューに、必ずと言っていいほど、入っているあれである(あくまで、自分の主観)。そして、炒飯を口に運んだ瞬間、疑念は確信に変わった。先ほどまでの幸せは雲散霧消、これ以上のダメージを抑えるべく、苦渋の決断、生まれて初めて大好きな炒飯を残すことに。ごめんさない、農家のみなさん。


店を出た後、口直し&翌日のクリスマスイヴ気分を盛り上げるために、バーに寄るという選択肢もあったのだが、炒飯のダメージは予想外に大きく、我々は寄り道もせず、まっすぐホテルに戻ったのだった。(続く)