武当山旅行記①(2008年1月16日)

出発日になって、降り続いていた雪も止んで一安心。ただ足元が凍結しているので、キャリーケースを引いているクリスは宿舎前から大門口までの間に、何度も転びそうになっていた。大門口でクリスの友達、施遠(シーユエン)と陳俊翔(チェンジュンシャン)と合流し、時間もないので、タクシーで武昌站(ウーチャンジャン、武昌駅)へいざ出発!


武昌站に着くと、すでに黒山の人だかりが出来ており、上海で経験した人の列など比べ物にならない程。それでも、何とか人の波をかき分けながら火車(フオチャ、汽車)に乗り込む。自分たちの席(寝台)を見つけると、すでに知らないおじさんたちが席を占拠していた。どうやら、中国では下段の寝台は乗客の憩いの場になっているらしい。ともあれ、腰を落ち着けるとすぐに眠気が襲ってくる。昨晩は興奮して一睡もできなかったのだから、仕方あるまい。クリスに寝ると告げると、1人で起きているのが嫌なのか、「この雑誌(もちろん中国語)を読め」とか、「ラーメンを食べよう」など妨害工作をしてくる。やれやれ、困ったやつ…それでも、10分もすると眠気に負け、不機嫌なクリスが起こしてくれた時には、到着3分前。慌てて起き荷物をまとめて、火車を飛び降りる。


先ほどまで、不機嫌だったクリスも友達のハイテンションに感化されてか、しきりに写真を撮る様に促す。さすが観光地になっているだけあって、駅からしてそれなりの雰囲気である。駅を出て、武当山へ向かうと思いきや、突然クリスが「景色が変わったので、どう行けば良いのか全くわからない」と宣い出す。思わず「ここはあなたの地元でしょ?」と突っ込んでしまったのだが、むやみに歩くのも疲れるだけなので、仕方なく地元の人に武当山までの道を教えてもらう。この時「今回の登山、本当に大丈夫なのだろうか?」と一瞬頭をよぎったのだが、この不安が後で見事に的中してしまうことになる。そんなこんなで、ようやく山に向かって歩き出したのだが、今度は歩けども歩けども山が見えてこない。あざけ笑うように最近の日本ではほとんどお目にかからなくなったオート三輪がどんどん我々を追い抜いていく、どうやらオート三輪がここではタクシー代わりのようだ。門らしきものが見えたと思えばICの入り口だったりなどのぬか喜びを何度も繰り返し、ようやく本当の登山口に到着。


一通り、記念撮影を終えると(この時点で、クリスの顔からすでに笑顔は消えていた)、時計はすでに16時を回っている。今からの登山はないだろうと高を括っていると、今まで静かだった陳俊翔がどうしても今日登りたいと声を荒げ始めた。取りあえず、ここからバスが5合目まで出ているとのことなので、チケット売り場?の「お姉さま」に聞いてみると、今日は雪が降っているので、バスは出ていないと冷たくあしらわれる。これで諦めると思いきや、歩いて登るとまだまだ諦めない様子。しかし冷静に話を聞いてみると、5合目まで20kmはあるようだし、明らかに今からでは無理。登山口の警備員にも説得されたこともあり、ようやく今日の登山を断念することになった。雪が降らなければ、明日の9時からバスが出ることを確認して、来た道を引き返そうとしていると、たまたま客引きのおじさんが居たのでクリスが交渉し、泊まることを条件に旅館まで車で連れて行ってもらえることに。こういう時のクリスはなかなかに頼もしい(ちなみに、いくつか部屋を見た後で、宿泊料をさらに値切っていた)。旅館に着いてホッとしたのも束の間、突然クリスが腹痛を訴えベッドに倒れこむ。唯一の武当山経験者がこんな状態で本当に大丈夫なのだろうか?不安を抱えたまま、夜は更けていったのであった…(続く)